Herb & Dorothy ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人


先週渋谷に行った際に懐かしのイメージフォーラムにて観てきました。
とてもとてもおすすめなのでご紹介。


NYナショナルギャラリーに2000点以上の作品を寄贈した老夫婦。
でもこの2人、多くの人がイメージするアートコレクターとはかけ離れた2人。
ごくごくふつうの1LDKのアパートに猫や亀と暮らし、夫ハーブは郵便局員、妻ドロシーは図書館司書。そんな2人がただただ好きでこつこつと30年にわたって集めたアートが結果的に現代アート史に残るコレクションになったという…おとぎ話のような本当の話のドキュメンタリー。


この2人の何が素敵って
「自分たちの買える値段で」「部屋に入る大きさで」という基準を持ちつつも
常にアーティストの求める美を一緒に見届けようとする気持ちを持ち続けているところ。
映画の中には単なるスケッチに、そのアーティストの作風の大きな変化や、完成にいたる考えを読み取る場面も出てきます。そのアーティストいわく、「多くのキュレーターやバイヤーはそれをみても何も気にも留めないけれど、彼らは僕の真意を読み取ってくれる。こんなに嬉しい事は無いよ」と。


時には猫の世話を引き受けることでタダで手に入れたり(といってもクリスト夫妻から直々の申し出で!)、コンセプチュアルアートのアーティストからメソッドを習ってトイレの壁に自分で描いて実践したりと、作品との関わり方は本当に彼らサイズ。

2人にとっては「アート」だったかもしれないけれど、それ以外の物事にも通じる人生の楽しみ方の一つの理想のかたちがこの映画には詰まっています。
何故かずっと心が動かされて泣いてばかりの私でした。そんな泣かせる演出、どっこにもないんですけどね。


ちなみに寄贈するまでただの一点も転売することは無かったそう。ナショナルギャラリーに入りきらなかった作品は全米50州に50点ずつ寄付するプロジェクト「VOGEL 50X50」として巡回中。


壁いっぱいに飾られた作品。とってもしあわせそうな2人。


公式ホームページ
監督 佐々木芽生
製作年 2008年
アメリ


監督の経歴もかなりユニークで気になります。